今回、勇気を持って完全秘匿を条件に取材に応じてくれた現役風俗嬢Aさん(20代・軽度発達障害当事者)に深く感謝申し上げます。
この記事は、Aさんが味わった同じ痛みを今も抱えている人たちのために、そして少しでも多くの人に現実を知って欲しくて書きました。
いつ性産業に流れ着いたのか
現役風俗嬢 Aさん私は20歳の時に性産業に流れ着いたんです…いつの間にか…
20歳という年齢は、多くの人が大学生活を謳歌し新社会人の夢を語る頃です。
表社会が賑わう中、その裏でAさんは生きていくために、そして「褒めてもらえる場所」を求め、たった一人で性産業のドアを開けた。
なぜ性産業に流れ着いたのか



私は高校卒業後、普通に昼職で働いてたんです。でも忘れ物が多かったり、遅刻したり会社の物を無くしたり怒られてばかりで三ヶ月も持たなかった。
その後もコンビニとか工場とか転々としたけど、どこに行っても同じで…すぐに辞めちゃってました。



私、小さい頃からずっと怒られてばかりで…逆に褒められたことなんて一度もなかったと思います。
だからもう「この世界に私の居場所は無いのかな」と思うようになっちゃって….
Aさんが働いた場所は全て「ミスしたら周りがフォローではなく人格否定」の場所だった。
そして、そう思ったAさんが次に立っていたのはピンクの照明が灯る風俗店の室内だった。
人生で初めて褒められたあの日



風俗の仕事の初めてのお客さんで「可愛いね」って言われたんです。
それが、私が人生で初めて褒められた瞬間だった。



「可愛いね」って言われただけで、「あ、ここが私の居場所だったんだ」って思ったんです。
当時20歳のAさんが初めて「褒められた」と感じた場所は、風俗だった。発達障害や軽度知的障害のある人は、人生において「褒められる」「必要とされる」という経験が乏しい。
だからこそ、「可愛いね」というたった一言に脳が過剰に反応してしまい、これまで一度も得られなかった「自分の価値」を埋めてしまう。
風俗の仕事でミスしても風俗の客は優しくしてくれるし怒らない。しかし、一度その味を知ってしまうと「怒られる世界」に戻ることは恐怖でしかない。でもこの時のAさんはまだ自分が発達障害者である事を知らない。
自分が発達障害者であると知ったその日



私が発達障害者だと知る事になったきっかけは、同じお店で働いてる女の子からの陰口でした。ある日、集合待機室で「あの子障害じゃない?笑」って言ってて、その時は別に気にしなかったんですが、後日私のことを言ってたみたいで…



私はそれを知った時、頭が真っ白になり仕事に手がつきませんでした。
後日女の子に言われたことが気になり検索してみるとほぼ当てはまってて…



その後、病院へ行ってみたら軽度の発達障害(グレーゾーン)だって診断されて…
その店にはいられなくなり、別のお店に移りました。
これがいわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる人たちが自分が発達障害者であることを自覚する最も多いルートであることは間違いないだろう。見た目は普通だし生活は送れるため、職場や一部の教師、親でさえ彼女たちが発達障害者である事に気づかない。
外側から彼女たちを発達障害者だと最初に気づくのは、残酷なことに発達障害者と馬鹿にする側の人たちだ。
怒られてばかりの人生を送ってきて初めて褒められた場所であり自分が発達障害者である事を知ったのは風俗だった。
Aさんは今もお店を転々としながら風俗で働いている。
私たちは何をすべきか
この問題に対してどうすればいいのか。まず私たち健常者ができる最も簡単で、最も効果があるのは「褒める」ことだと私は考える。
職場の同僚や後輩で「ミスが多い子」や「遅刻が多い子」、「忘れ物が多い子」に対し注意する事は勿論大事だが、彼女たちが出来たことを5個褒めてから「ここはこうしよう」と一つ言う。Aさんのように自分がグレーゾーンである事に気づかず、気づかれずに社会に出た人たちは極端に自己評価が低い場合が多い。
注意だけで終わってしまうとグレーゾーンの人たちはますます自己否定を繰り返してしまう。だから「注意する前に褒める」ことによって彼女達は「自分は必要とされている」事を感じ、居場所を失うことも少なくなるはずだ。
文部科学省による調査




https://www.mext.go.jp/content/20230524-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
文部科学省 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について 21ページより
文部科学省「文部科学省 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について」より、通常学級の児童生徒のうち、発達障害等の可能性があるとされた子は8.8% → 35人学級なら約3人。 でも、特別支援学級や進路指導を受けているのはわずか1割未満である。残りの9割は「普通の子」として怒られ続けて大人になる。Aさんもその一人だった。
この結果は、発達障害及びグレーゾーンの児童が通常学級に紛れ込んでいる事と、2022年に政府が調査に乗り出すまでに見過ごされたグレーゾーンが社会の中で大量に存在している事実を示している。


